18切符を使って熊本に旅行に来ました。
基本宿泊は自由空間等ネットカフェのたぐいで済ませていたので
長旅の疲れを癒す意味を含めて、人吉駅周辺にて温泉を探していました。
そんなところで見つけたのが〈新温泉〉

一目見て「ここまで名前と裏腹な温泉もめずらしい!」という感想が心をよぎった。
誰もがそう思うことだろう。
そして入店してからもその期待を裏切ることはまったくない。
まず建物へ足を踏み入れる時点で戸口が男女別に分かれているので要注意。
ここで入り方を間違えると直ちに警察の御用になってしまうので気をつけたし。

中へ入るとそこにはまさに「三丁目の夕日」的世界が広がっている。
まるで半世紀ほどタイムスリップしたかのようだ。
ちなみにこの更衣室においては時々地域の住人を招いてJAZZのリサイタルなどが開かれているようである。
その様子について書かれた新聞記事が壁に誇らしげに張られていた。
ぜひとも参加してみたかった。
番台にて料金(300円)を払うと、気のよさそうなおばちゃんが
シャンプー類を一切持っていない私を気の毒に思ったのか石鹸を貸し出してくれた。
もちろん固形である。
浴場内に入っても、シャワーなどという洒落た設備は存在しない。
すべての入浴作業は風呂桶によってこなさなければならない。
温泉といえばマッサージチェアなどの健康器具類を思い浮かべる人もいるだろう。
その点に関してはこの〈新温泉〉においてもぬかりはない。
↓がそれである。

むろん見つけた瞬間、私も試してみました。
日ごろの不健康がたたってか、1分としないうちに土踏まずが悲鳴を上げた。
一家に一台、竹ふみを置いておきたいものです。
この〈新温泉〉一見古臭く感じるかもしれない。
実際私もはじめはそう思っていた。
しかし入浴後にのんびりとあたりを細かく眺めてみると
床の木目の輝きに目が留まる。
おそらく番台にたたずむおばあちゃんがしっかりと雑巾で乾拭きをしていることが推察される。
この〈新温泉〉ではソファから体重計にいたるまですべてが丁寧に利用されている。
そこには「使えるものはしっかり手入れして、使い続ける」という思想が一貫していることがわかる。
いつからか日本は「壊れたら買いなおす」ではなく、「新製品が出たから買い換える」という消費社会に突入していた。
この〈新温泉〉では「買い換えられた製品」など一切目にすることはない。
〈新温泉〉のそんな古きよき日本の姿を今に伝えるために、明日もおばあちゃんはひっそりと番台にたたずみ続けることだろう。
そんなことを思いながら私はザックを背負い直し、夜の帳が下り始めた人吉の町へと繰り出した。
ちなみに人吉にはネットカフェ等はないので、その夜は駅前のベンチで寝た。



