HERITAGE OF MODEARNIZATION Story.14 『貿易立国の原点』横浜港発展の歩みを物語る近代化産業遺産群
ペリーが浦賀へ来航した頃、横浜は小さな漁村に過ぎなかった。しかし、開港以降、数次にわたり港湾の拡充のための工事や船舶の修繕を目的としたドックの建設などが行われ、横浜港は、我が国有数の国際貿易港として日本の表玄関へと成長していく。また、貿易の興隆に伴い、港湾に近接した内陸部にも、貿易金融や外国為替の専門銀行、海運会社、商社などの企業、税関等の官公庁、輸出入品を保管する倉庫群など多くの建築物が当時の最新の建築技術と秀逸なデザインを用いて建設され、今日の横浜の景観が形作られていった。 このストーリーの近代化産業遺産例
1853 年、アメリカのペリー提督が4 隻の船を率いて浦賀に来航し、開港を強く要求した。その結果、翌1854 年、幕府はアメリカと「日米和親条約(神奈川条約)」を締結し、その後、1858 年に同じくアメリカと「日米修好通商条約」を締結した。これを皮切りに、オランダ、ロシア、イギリス、フランスとも修好通商条約を締結し、1859 年には、神奈川(横浜)、長崎、箱館(現:函館)を開港し、200 年以上にわたる鎖国体制に終止符を打った。
このうち「神奈川」は、日米修好通商条約締結の地であり、かつ江戸に最も近接するという点で、重要であると考えられていた。
当時の横浜は、国際貿易に対応できる港湾施設を持たない小さな漁村あったため、開港にあわせ、現在の大さん橋の付け根付近に「象の鼻」と呼ばれる2 か所の波止場が建設されたが、これらは大型船舶が直づけできないものであった。
このため政府は、明治中期から大正期にかけて、数次にわたる港湾施設の建設工事を実施し、1889年から1896 年にかけて「大さん橋ふ頭」や東・北水堤(内防波堤)を、1899 年から1917 年にかけて「新港ふ頭」を整備した。また、民間企業の横浜船渠により、船舶の修繕を主目的としたドックも建設された(後に造船も行うようになった)。これらの近代的な港湾施設の整備の結果、横浜港はわが国有数の国際貿易港として我が国の表玄関へと成長していった。なお、この時期に整備された港湾施設のうち、新港ふ頭の赤レンガ倉庫(税関の倉庫として使われていた)や旧臨港線、2つのドックなどが現存しており、当時の事業の姿を今日に伝えている。
開港当時の横浜港の主要輸出品目は、生糸や茶であった。貿易の興隆に伴い、港に近接した内陸部には、貿易金融・外国為替に特化した銀行や海運会社、商社などの企業、税関等の官公庁、輸出入品を保管する倉庫群などをはじめ、多くの建設物が建設された。これらの建築物は、当時の最新の建築技術を用い、デザイン的にも秀逸なものが多く、「旧横浜正金銀行本店本館(現:神奈川県立歴史博物館)」、「横浜市開港記念会館(旧開港記念横浜会館、通称:ジャックの塔)」など、当時の姿のままで現存するものも少なくない。
生糸や茶を輸出する一方で、得られた外貨は、我が国の近代化に重要な役割を担う軍艦等の艦船、工作機械、さらには最新の産業技術の輸入などに活用されていった。さらにこの頃、浅野総一郎らによる川崎から横浜にかけての臨海部埋立や埠頭造成が進められ、京浜工業地帯が形成されたことや、外洋航路の発達によって、それまでの生糸貿易港から工業港・旅客港へと大きな発展を遂げていった。現在山下公園に係留されている「氷川丸」も、横浜と北米を結ぶ航路に就航した艦船のひとつである。また、「日本郵船歴史博物館(横浜郵船ビル、旧日本郵船㈱横浜支店)」は、黎明期から今日に至る我が国海運の歴史を展示した博物館として親しまれている。
その後、1923 年9 月1 日の関東大震災により、開港以来築かれてきた港湾施設の大半が打撃を受けたが、国内第一港として復興事業が進められた。復興事業は、神奈川県と横浜市、生糸商などの横浜商人をはじめとする市民らを中心に、国の力も借りて進められた。一連の事業により、「生糸検査所(現:横浜第2合同庁舎)」、「ホテルニューグランド本館」、「神奈川県庁本庁舎(通称:キングの塔)」、「横浜税関(通称:クイーンの塔)」、「横浜商工奨励館(現:横浜情報文化センター)」や、市街地の倒壊家屋の瓦礫等を利用して造成された震災復興公園である山下公園など、現在の“みなと・横浜”を象徴する建築・建造物群が造られた。港湾施設についても、昭和初期までに大半が復旧し、1921 年~1934 年にかけては、新たに高島ふ頭や山内ふ頭が建設されるなど拡大整備が継続された。
このように、横浜港の発展は我が国の近代産業の発展と軌を一にするものであり、また今日の加工貿易による「貿易立国」の原点として極めて重要な意義を持つものであると言える。
- 14-a 旧臨港線港一号橋梁 /神奈川県横浜市西区
- 14-b 横浜赤レンガ倉庫(旧新港ふ頭保税倉庫一号倉庫)/神奈川県横浜市中区
- 14-c 横浜税関/神奈川県横浜市中区
- 14-d 神奈川県立歴史博物館(旧横浜正金銀行本店本館)/神奈川県横浜市中区
- 14-e 横浜市開港記念会館(旧開港記念横浜会館)/神奈川県横浜市中区
- 14-f ホテルニューグランド本館/神奈川県横浜市中区
- 14-g 氷川丸/神奈川県横浜市中区
- 14-h ドックヤードガーデン(旧横浜船渠第2号ドック)/神奈川県横浜市西区
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出典:経済産業省作成「近代化産業遺産群33」
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