HERITAGE OF MODEARNIZATION Story.24 京都における産業の近代化の歩みを物語る琵琶湖疏水などの近代化産業遺産群
東京遷都により、京都の産業は一旦急激に衰退したが、政府による勧業基金の貸与などにより、外国人技術者の招聘や様々な勧業施設の設置、留学生の派遣による技術・機械の導入、博覧会の開催など積極的な勧業施策を展開し、その結果、試行錯誤はあったものの、西陣の機業を始めとして各産業とも立ち直りを見せた。この間には、精密機械器具製造の魁となる島津製作所も創業され、後に同社が医療用のX線装置、蓄電池などで新分野を切り開く礎が整えられた。また、明治中期には、琵琶湖に疏水を開削することにより、京都への舟運を開き、同時に動力、灌漑などに利用することで産業の振興を図るべく、琵琶湖疏水が造られた。さらに、日本初となる水力発電所が蹴上に建設され、蹴上インクランの動力源となった。これらの事業は、この後、我が国初の路面電車の開通や紡績、伸銅、機械などの新産業の振興に力を発揮し、京都の産業発展に大きく貢献していく。 このストーリーの近代化産業遺産例
京都は平安京以来千年以上もの間、我が国の首都として栄えてきたが、1869 年に東京へ都が移り、産業も急激に衰退し、人口も急減していた。
これにより京都産業は甚大な影響を受け、特に西陣では明治維新により需要層(武家衆・禁裏の堂上衆)の崩壊や風俗の大転換、さらには廃仏毀釈の思潮による僧衣・荘厳用裂地需要の途絶が追い打ちをかけていた。
政府は、1869 年に勧業基立金の貸与、翌年には洛中の地子免除と産業基立金の下賜を行い、京都府はこれらの基金を活用して様々な殖産興業施策を実施した。1870 年に勧業基立金を西陣に貸与し「西陣物産会社」を設立、翌年には外国人技術者を招聘したほか、河原町二条下るの舎密局設置、窮民授産所・勧業場・製糸場・伏水製作所・織殿・染殿などの勧業施設の設置や、留学生派遣等による技術・機械の導入、博覧会の開催など積極的な勧業施策の推進を図った。この結果、試行錯誤はあったものの、各産業とも立ち直りを見せ始めることとなった。
西陣機業では、京都府が1872 年にリヨン(フランス)へ佐倉常七・井上伊兵衛・吉田忠七の3人を留学させた結果、ジャカード、バッタン、紋彫機などが導入された。それまで紋織などは高機と呼ばれる手織機で数人がかりで織られていたが、ジャカードは一人で織れる上、能力も4倍に向上させるものであったといわれる。
また、舎密局に通い理化学への知識を深めていた島津源蔵は、1875 年に木屋町二条下るに島津製作所を創業、教育用理化学器械の製造に着手し、精密機械器具製造のさきがけとなった。また、二代目島津源蔵は、理化学機器にとどまることなく、医療用のX線装置、蓄電池などの新分野を切り開いた。
一方、第3代京都府知事となった北垣国道は、京都に隣接し水量が豊かな琵琶湖に着目し、疏水を開削することにより、琵琶湖と京都を結ぶ舟運を開き、同時に動力、灌漑、防火などに利用することで産業を振興しようと、1885年に琵琶湖疏水の建設に着手した。北垣は、工事責任者として工部大学校(現・東京大学工学部)を卒業したばかりの田辺朔郎に白羽の矢を立て、難工事の末に、5 年後の1890 年に疏水(第1疏水)が竣工した。
当時、我が国の重大な工事はすべて外国人技師の設計監督に委ねていた時代にあって、すべて田辺ら日本人の手によって行った我が国最初の大土木事業であった。特に第1 トンネルは、当時の我が国最長のもので、山の両側から掘っていくほか、山の上から垂直に穴を掘りそこから山の両側に向けて工事を進めていく竪坑(シャフト)方式を我が国で初めて採用し工事の促進を図った。また、1891 年には、事業用としては我が国最初の水力発電所が蹴上に完成した。これは、船運のために建設されたインクラインの動力源にもなった。
その後、第1疏水だけでは電力需要等の増大に対応できなくなり、また、地下水に頼っていた市民の飲料水が質・量ともに問題となってくると、第2代京都市長となった西郷菊次郎は、市の三大事業(第2疏水事業、水道事業、市電開通及び幹線道路拡幅)を計画し、事業の中核として第2疏水建設を1908年に着工し、1912 年に完成させた。
琵琶湖疏水の完成、さらに蹴上発電所の運転開始は、1895 年の我が国最初の路面電車(京都駅~伏見)の開通につながるとともに、紡績、伸銅、機械、タバコ等の新しい産業の振興に絶大な能力を発揮することになり、手工業から機械工業へと転換する過渡期であった京都産業発展の基礎確立に大きく貢献することとなった。
- 24-a 琵琶湖疏水 第一隧道/滋賀県大津市、京都府京都市山科区・東山区・左京区
- 24-b 南禅寺水路閣/京都府京都市左京区
- 24-c 蹴上インクライン/京都府京都市左京区
- 24-d 蹴上浄水場/京都府京都市山科区
- 24-e 蹴上発電所/京都府京都市左京区
- 24-f 島津創業記念資料館/京都府京都市中京区
- 24-g ジャカード機(木製200口 荒木小平作/西陣織会館所蔵)/京都府京都市上京区
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出典:経済産業省作成「近代化産業遺産群33」
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