HERITAGE OF MODEARNIZATION Story.27 商業貿易港として発展し続ける神戸港の歩みを物語る近代化産業遺産群

都市機能ゼロからの出発

神戸は、開港により、欧米列強の外交官、貿易商人らが居を構えることになり、貿易都市としての幕開けを迎えた。近世に都市として栄えていたのは、北前船寄港地であった兵庫津であり、居留地が造成された神戸村の東部では都市機能の形成はほぼゼロからのスタートであったが、その後数年をかけ、神戸の居留地は、碁盤目状に区画整理された街区に街路樹やガス灯が並び、下水道なども整備された町並みへと変貌を遂げていく。また、神戸港における貿易は、当初は殆どが居留地貿易であったため、居留地周辺には各国の商社、銀行、船会社、倉庫などが建ち並んだ。日清戦争後、神戸港は、香港、上海、横浜を凌ぐ東洋最大の貿易港へと発展、さらにその後において、阪神地域の工業化などとともに、人・物・情報が行き交う世界有数の国際貿易港へと歩みを進めていく。 このストーリーの近代化産業遺産例

1868 年1 月1 日、神戸は開港し、多くの欧米列強の外交官、貿易商人らが神戸に居を構え、貿易都市としての幕開けを迎えた。
近世に都市として栄えていたのは北前船寄港地であった兵庫津(現:神戸市兵庫区)であり、外国人居留地が造成された神戸村の東部(現:神戸市中央区沿岸部)では都市機能の形成はほぼゼロから開始された。初代兵庫県知事伊藤博文のもと、イギリス人土木技師ジョン・ウィリアム・ハートの設計によって、浜辺の500m四方の一角が碁盤目状に区画整備され、現在の街区の枠組みが形成された。街路樹やガス灯が並び、公園やグラウンド、下水道などが整備され、神戸の居留地は数年をかけてその全容を整えていく。当時の英字新聞“The Far East”では「東洋における居留地としてもっとも良く設計された美しい街である」と高く評価された。特に、下水道は我が国初の煉瓦造下水道であり、浪花町と明石町では一部(約90m)が創設時のまま現在も使用されている。また、居留地の造成が完成しないうちに開港されたため、居留地周辺にも外国人住宅の建設が進められ、早くから日本人と外国人との雑居が進んだ。
神戸港における貿易は、1890 年頃までは8~9 割が居留地貿易であり、居留地に進出した各国の外国商会によって独占されていた。このため、居留地周辺には商社・銀行・船会社・倉庫などが立ち並ぶようになった。1899 年、居留地が我が国に返還された後も、1914 年に第一次世界大戦が始まるまでは外国商会の優位が続くこととなった。
一方、神戸の港湾施設は、その重要性に比して築港工事が遅れた。日清・日露戦争により国費が逼迫した等の理由により、築港工事は1906 年から開始された。第1 期工事では岸壁・第1~4 突堤を築造し、完成した設備から次々と使われ、入港船舶出入り貨物も目覚しい増加をとげた。さらに、第1 期工事の竣工を待たず第2 期工事が1918 年に着工され、突堤や防波堤の築造や後背地の埋め立て等、内国貿易設備も整備されていった。
こうして神戸港は、1894 年の日清戦争の後には香港・上海・横浜をしのぐ東洋最大の貿易港となり、1904 年の日露戦争を背景としてさらに発展したが、貿易額が飛躍的に伸びたのは第一次世界大戦の開戦後であった。この頃、多くの日系の有力商社・企業の進出が見られたが、中央区海岸通に多く残される日系資本による西洋建築物は、その象徴ともいえる。
「貿易を日本人の手に」という情熱をもっていた金子直吉は、もともと洋糖輸入商であった鈴木商店の「大番頭」として、1902 年以降、取扱商品の多角化と製造業への進出を急速に進めた。鈴木商店は、第一次世界大戦下の積極貿易が功を奏し、1917 年には三井物産を上回る年商を上げる等、一大コンツェルンに拡大した。しかし、大戦後の不況が本格化し、急速な多角化で多額の借入金を抱え、1927 年の金融恐慌により倒産を余儀なくされた。鈴木商店が当時設立した会社は、㈱神戸製鋼所、帝人㈱、日本商業㈱(現:双日㈱)、豊年製油㈱(現:㈱J-オイルミルズ)、㈱播磨造船所(後の石川島播磨重工業㈱、現:㈱アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド)、帝国麦酒㈱(現:サッポロビール㈱)等、今も300 社を超え、我が国の経済を牽引している。
その後、後背地の都市化や阪神地域の工業化とともに、神戸港は人・物・情報が行き交う貿易港としてさらなる発展を遂げた。横浜港が京浜工業地帯と一体となり工業港としての性格が強まっていったのに対して、神戸港はほぼ一貫して商港として発展し、現在も世界有数の国際貿易港として重要な位置を占めている。

  • 27-a 神戸港新港第2突堤/兵庫県神戸市中央区
  • 27-b メリケン波止場/兵庫県神戸市中央区
  • 27-c 神戸税関本館/兵庫県神戸市中央区
  • 27-d 旧居留地煉瓦下水道/兵庫県神戸市中央区
  • 27-e 海岸ビル/兵庫県神戸市中央区
  • 27-f 旧横浜正金銀行神戸支店(現神戸市博物館)/兵庫県神戸市中央区
  • このストーリーのすべての遺産を見る
出典:経済産業省作成「近代化産業遺産群33」

前のストーリーを見る ストーリーに戻る

このストーリーの近代化産業遺産例

TOP